2009/01/22

レコーディングエンジニアの今昔

まずはじめに、 レコーディングエンジニアとは何か?

レコーディングエンジニアを取り巻く環境の変化などを説明します。


この職業は時代とともに若干立場が変わっていきました。






日本の場合


【昔・1960年代~1970年代】

一般的にミキサーと呼ばれていました。
レコード会社の社員である事がほとんどで、サラリーマンです。

スタジオもレコード会社専門のものしか無く、音楽制作は社内で完結していました。
マルチトラック録音などが普及するのは後期で一般的には2トラック同時録音が主流。
スタジオのマイクをミックスして直接テープに完成品を作る という今では考えられない緊張感のあるかっこいい仕事だったのです。

必然的に機械の修理メンテナンスも行うことがおおく、技術や電気の知識が必要とされていました。

エンジニアという名前はこの時代の名残です。



【ちょっと昔・1980年代~1990年代】

時代はレコードからCDへ移行し、若者にはウォークマンが大流行。
憧れのミニコンポでお気に入りのバンドのCDを聞くのがお洒落な時代です。

この頃から録音現場でも個性的な音を求めるアーティスト、バンドが増えてきます。
機材も恐竜のようにありとあらゆるジャンルや個性を追求したものが沢山開発されます。
デジタルリバーブの名機Lexicon480やYAMAHA REV7、BBEのエキサイター等が有名です。
ここで録音機に革命的なマシーンが登場します。

SONY PCM-3348!

黒々としたデカイ箱には細いテープが一本、なんと48トラック録音可能。
タイムコードトラックとアナログトラック、サンプリング機能も別に付属すうという革命的なレコーダーでした。


「デジタルって音が良いから古い機械はもういらない。時代はデジタル」
という理由で日本のスタジオからアナログレコーダーが消えていきます・・。


まさにバブル絶頂期の日本の様にイケイケ状態が続きました。楽器の世界にも電気化の流れが加速。


リズムマシーンやMIDIシーケンサーの発達に伴いドラム・ベースがいないバンドなどが登場します。TMネットワークとかです。


録音の現場も機材の多様化、作業量の増加に伴い労働時間が増加・・。 リリースはハイペース、何日も寝ずにスタジオに泊まるなんて当たり前の時代です。

今でも「もうマル3日も寝てないよ~」なんて挨拶代わりに言う原始人もわずかですが生き残っています。


このデジタル崇拝はレニークラビッツが世に出るまで続いていきます。

レコーディングエンジニアの売れっ子はフリーとなり1日9万円といいうギャラをもらう花形商業へと変貌しました。
この頃はアシスタントなる生物がスタジオ業務の大半を担っていて、セッティング、お茶の用意、掃除、バラし、エンジニアの機材運搬などありとあらゆる事を一人で行います。

エンジニア様の中にはマイクがあるのを確認してつまみを右に回すだけ。
歌の録音が始まると「後はよろしく」と休憩室に行ってしまうなんていう種類もいらっしゃいました。

有名なアーティストの仕事を請ければ一生安泰。

そんな幻想まで本気で信じる事があたりまえの時代です。


この頃、人数増加とともにクオリティーの低下が著しくみられ、ドラムを録音した事がないエンジニアも登場!
ミックスは任せろ とばかりに機械をいじりまわし完成するのは次の日の昼過ぎ。


遠くで音が鳴っているみたい・・という最悪な仕上がり。そんな腕でも仕事は沢山ある俺様エンジニアも多く登場しはじめました。


そう、これは音楽業界バブルが終わりを迎えるまで続きます。




【今・2000年~現在】

音楽バブルは終わりを向かえ、ミリオンヒットは影を潜めます。


同時にスタジオ大量閉鎖、エンジニアの低ギャラ化が進みます。
世に言うインディーズ全盛期も相まって、音楽はお金をかけなくても出来る!


そうです。 ProToolsの登場です!


アナログからデジタルへと進化したテープレコーダーは完全にMACという小さな箱に入ったハードディスクに役目を奪われます。
今でも「マワシマース!」とアシスタントが言いますがハードディスクは既に回っています。


一部のアナログ好き・機材好き・ビートルズ好きの人たちが予算がある仕事だけ限定で今だにアナログテープレコーダーを使用しますがほとんどがProTools,Nuedo等のコンピューターベースのレコーダーで作業を行っています。


加えてスタジオも小規模である程度の録音が出来るところが多数オープン。


スタジオ料金も一気に3分の1~5分の1に低価格化。


エンジニアのマニピュレーター化、ミュージシャンのエンジニア化が進み、誰でもスタジオのような環境を手に入れる事が出来るようになりました。


ギタリストやキーボーディストがレコーディングエンジニアをかねる事もよく見られます。


これにより本職のエンジニア陣は仕事の減少により、さらなる低ギャラ化、何でも屋化が進みました。


作家やプロダクションと組まないと仕事が無いなんていう状況です。


特別な知識無しでパソコンの前に座れば録音が出来る。


これを『誰でもエンジニア化』と呼ぶ事にします。


この『誰でもエンジニア化』による公害も多数発生。


自称エンジニアやエンジニアという名の素人が大量に出没。


クオリティーのバラつき、低下が蔓延して仕上がりが素人テイスト満点のCDが数多く世に出ることになりました。





【未来予想・2010年以降】



『誰でもエンジニア化』により近い未来、レコーディングエンジニアなる職業は絶滅の危機に瀕するでしょう。


録音環境の変化、制作費の変化、アーティストの変化によりミックスだけ出来る人はもう要らなくなります。


録り音が素晴らしく良い とか アレンジも出来る とか何か付加価値がないと生き残れません。


今までのように卓の前に座ってタバコをふかしてお金がもらえた時代はもう終わっています。


レコード会社のプロデューサーに尻尾を振っても仕事は来ないのです。



次回は音楽大国アメリカのエンジニアとは?何か?をお送りします。


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1 件のコメント:

  1. かすみしゅらん2011/07/07 7:28

    いつも楽しく拝見させて頂いております。
    下働きからスタジオで働いていつかはマスタリングエンジニアになりたいという夢がありました。ですがもう25歳。しかも女だから現実的に厳しいかなと思っていますが、このお話を拝見してなんだか夢が叶った様な気がして嬉しかったです。
    レオナルドさんはとても立派ですね。仕事に対する姿勢はエンジニアに限らず、とても参考になりますし、尊敬しています。やっぱり、エンジニアの力があってこそいい作品ができるんですね。
    どんなアーティストよりもレオナルドさんの大ファンです。これからもお体に気をつけて頑張ってください。応援しています。
    関係のないコメントですみません。

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