私のエンジニア経験について 後半

その後、日雇い派遣のアルバイトをしながら小さなスタジオエンジニアとして生活をしていた20代後半。
本来ならば「最悪」の時期のはずなのですが
今思うとこの時期は大変重要だったなあ と思います。


それまでは大きなスタジオでSSLやNEVEのコンソールがあり、
マイクはビンテージノイマンが使い放題。
機材は一流、ミュージシャンも一流。


環境は天と地ほど変わり・・



小さなスタジオにProToolsHDとYAMAHA O2Rがあるだけ。
非常に限られた機材で、素人ミュージシャンの録音という状況です。
しかしここで重要になったのは
「どんな状況・環境でもベストパフォーマンスを出す」

という事です。

まさに第二期の修行でした。

例えるならランナーが空気の薄い高地でトレーニングを行う様な状況です。
限られた環境で仕事をこなす事で様々なアプローチで、より高いスキルを身に付けられたと感謝しています。
この時期自分の音が良くなるのを実感しました。(自慢ではないです。実際変わりました)音が良くないのを機材のせいにするエンジニアの話を聞きますが
光芒筆を選ばず ではないですが、ある程度の機材があれば最低限のクオリティーに持っていくことは当たり前と考えます。


■現在
色々悩んだ末、制作会社を立ち上げ今に至っています。
仕事を請ける→仕事を作る という考えに変わったのが大きかったと思います。
会社として音楽制作など全般を請け負うにはレコーディングエンジニアという経験が非常に有効に働いていると感じています。




■最後に・・

エンジニアとして腕を磨く事は当たり前です。
しかしそれだけでは雇われエンジニアの域を脱しません。

仕事を請ける側にいる限り仕事が来るのを待つしかない  という事。
これは非常に重要です。
私はレコーディングエンジニアという職業に固着していた事に気が付きました。
そして"レコーディングだけ"をやりたくてこの仕事を選んだのではないとも感じました。

その結果
「エンジニアを軸にしてやれる事は全部自分でやろう」と思えたのです。

ディレクションやA&R、スタジオやミュージシャンのブッキング、値段交渉、新人発掘、予算管理、弁当の手配など色々な業務を極力自分でやるようにしました。


結果、株式会社を立ち上げ現在に至るわけですが
エンジニアのみに固着している人は今でも沢山いると思います。
そして多くの場合、時代に取り残されつつあります。


もっと広い視野で物事を捉えていく柔軟さがこれからは必要だと思います。


仕事は来るのではなく自分でつくる位の姿勢が必要だと思います。
現在は制作会社を運営しながら次の目標に向けて動いているという感じです。


・・
まじめな話になってしまいましたが、ドラクエ3ってやった事ありますか?
あの転職システムっていうのはものすごく世の中の仕組みをあらわしているなぁ と感心するのです。
転職できるレベルになったらポイポイ転職していては中途半端な能力のキャラになってしまいます。
しかし戦士を極めた後に魔法使いになると戦える魔法使いに育つのです。

まずは一つの道をある程度究め、技術を習得する事は非常に大切だと思い知らされました。
幸い私はレコーディング技術を持っていましたので他の仕事をするにも軸をもって取り組む事が出来ます。

まずは一番の武器になるスキルを徹底的に磨く事が重要だと思います。


これから音楽業界に入ろうとしている人達も "人に負けない何か" を身に着けてほしいと思います。


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1 件のコメント :

  1. 私も10年前までエンジニアやっていました。とてもいい記事ですね。
    今の時代でもこのように音楽に対する考えを持っている若い方がいて嬉しく思います。知り合いのエンジニアや同期も引退した人が大半です。寿命のある職業だと実感しています。

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