ディレクション能力の必要性について(その1)

ディレクションとは普通はディレクターが行う仕事です。

しかし近年はディレクターがA&Rとなり、ディレクションの仕事はプロデューサーが行う事が多いように思えます。
さらにレコーディングエンジニアにもディレクション能力が必要な現場も多いのが実状です。


では、ディレクションとは何の事でしょうか?

辞書によると


ディレクション【direction】
指導。管理。監督。演出。指揮。「本の―を手がける」
2 方角。方向。



3 傾向。また、目的。

つまりディレクターは作品監督です。
レコーディング現場のディレクションは様々なものがありますが主に 演奏、音色、歌唱を取り仕切るのがディレクションになります。

しかし最近のディレクターといえばディレクションをしている事は少なくて完全にA&Rになっている事が多い傾向にあります。

つまりディレクションをする人間がいないレコーディング現場が多いのです。
そういった場合はレコーディングエンジニアがディレクションを求められる雰囲気になったりするのですが・・・問題は色々あります。



〈レコーディングエンジニアがするディレクションの問題点〉

・その1
音質や音色に意識が大きく偏る事がある。

マイクのチョイスや楽器の音は重要ですがそればっかり気にしている人がいるのも事実です。実際マイク決めだけで歌手が歌えなくなるほど喉を消耗してしまったなんて事があります。

・その2
個人の趣味に走る

人により音楽の趣味は様々です。もちろんエンジニアだって趣味指向があります。
ことディレクションまで任された途端に自分の趣味を押し付ける場合があります。
これはセンスの問題もあるので言われた事を忠実に出来る人でもこういった事になる可能性があるので注意が必要です。

・その3
編集で全部なんとかしようとする

近年のDAWは優秀です。生のドラムもクオンタイズ出来てしまいますし、歌の音程だって修正出来ます。
それを一番知っているのはエンジニアなのですが、自分が作業するからという前提で
満足な演奏もさせずに編集に頼ろうとする事があります。
そのほうが早いという気持ちは理解できますが、良くない思考です。

〈まとめ〉
ディレクションは経験が必要です。
色々なスタイルや方法論があります。時間や予算の事まで考慮して進める必要があります。
時には予定していた作業をやめるなんていう決断もしないといけないのです。
優秀なエンジニアでもディレクションが出来ない(やらない)人は沢山いますし、逆に軽々しくディレクターを気取っているだけのエンジニアもいるかもしれません。
ディレクションとは何か?何を重要視してどんな采配をしていくか?
ディレクターは難しいのです。


私がアシスタントをしている時ある方にこんな事を言われました。
「○○君はプロデューサーになりたいんでしょ?」
そのときはピンと来ませんでしたが、今考えると私は"レコーディングエンジニア"ではなく"プロデューサー"になりたかったんだとハッキリわかります。
ディレクションをするエンジニアはプロデューサーです。
作品全体を見て作業を進めていく技量が必要です。
もっと大事なのが"責任"です。
ディレクションをするという事は責任を負うという事も忘れないで下さい。


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