こんな質問を多く受けます。
ある人は「全部のトラックにノーマライズをかけると音圧が上がる」というような事を人に言われたり・・・
そんな不確かな情報がひとり歩きしているノーマライズについて書きます。
■ノーマライズ (NORMALIZE) とは何か?
ノーマライズとはオーディオ波形のピーク(最大値)を何dBに変更するか?というゲイン操作を行うエフェクトです。
下の図1の上(青)が元々の波形で下(ピンク)がノーマライズ-0.1dBに加工した波形です。
赤いラインがピーク・最大値となりますのでこのような処理が行われます。
(今回は一部片方のピークのほうが大きい所があるため少し偏った感じに見えますが気にしないでください)
(図1)
単純に音の大きさが大きくなっているのがわかります。
このようにその波形全体のピーク(最大音量)を元に処理されるので
一部に大きな音が入っているようなファイルでは、図2のようにその音が大きい所を基準に処理されます。
(図2)
■ノーマライズの問題点
例えばミックスダウン前にノーマライズを全トラックにかける・・という処理をするとして
具体的にどんな問題が起きるのでしょうか?
まず下の写真をみてください。
ノーマライズ処理していない曲をマスターフェーダーでレベルオーバーしないように
簡単にミックスダウンした状態になります。
次に、全トラックにノーマライズ(-0.1dB)をかけた状態で同じようなミックスを行いました。
全トラックでノーマライズ処理が行われた結果、音量が増加して
最終的に各トラックのフェーダーがかなり下に位置しているのがわかると思います。
全ての音が大きくなったので全体的に下げないといけなくなる・・とは誰でも理解できるはずなのですが
ここで起こる問題まで気にしていないようですので、少し詳しく説明していきます。
・問題1
音が大きくなる→フェーダーで下げる という事になるので結局無駄になる場合があります。
また、ほとんどのDAWでフェーダーの下の方は解像度が落ち、操作も荒くなるので良いことはひとつもありません。
フェーダーのオートメーションを書くのも非常に不自由になります。
・問題2
ノーマライズされてピークが-0.1dBになった音にEQなどをかける場合は
ちょっとしたEQでも簡単にレベルオーバーしてしまいます。
さすがに32bit浮動小数点処理されているソフトでも無意味なレベルオーバーは避けるべきだと感じます。
特に浮動小数点処理でないDAWを使う場合は完全にレベルオーバー=クリップになってしまうので良い所がないどころか、デメリットしかありません。
・問題3
ノーマライズは単純に音量・ゲインを操作しているだけですので
はっきりいって無駄な作業の時間や手間をかける必要性を感じません。
例えばオーディオファイルが音が小さすぎて困る・・というような場合にはゲイン処理をすれば良いだけです。
■ノーマライズのまとめ
ミックスダウン作業に関してはノーマライズは必要ない処理 と言ってもよいと思います。
CubaseやPro Toolsでは波形単位でゲインの増減を簡単に操作できる機能が付いています。
よほど小さすぎる音になっているMIDI音源の場合は書き出し直すほうが良いでしょう。
ノーマライズを"マキシマイズ"と混同している人がいる為、ノーマライズで音圧が上がる、とか音が良くなる といった間違った情報が伝わってしまっているようです。
ノーマライズは基本的に必要ない
私はそう考えます。
ノーマライズについて でした。
おわり
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