レコーディングエンジニアから見たマスタリングについて書かせていただきます。
多くのサイトやブログで書かれているマスタリングの目的とは「音圧を上げる事」のようですが
音圧を上げる事にどんな意味があるのでしょうか?
私は、はっきり言って90年代から始まった音圧戦争は既に終わっているんじゃないかと思います。
終わっているというのは 音圧を稼ぐ意味が薄くなってきているんじゃないか?という意味です。
あの超有名マスタリングエンジニアのボブ・ラディックもあるインタビューでこう言っています。
「近年のCDへの収録音量感を稼ぐためのマスタリングは良くない方向だと思う。
何度も聞いていると耳が疲れるし音楽の表情が失われる事にもなりかねない。もしビートルズの音源が今のような音だったらここまで有名なバンドとして歴史に名が残っていなかったかもしれない」
このボブ・ラディックの言葉をどう捉えるでしょうか?
クライアントは音圧を上げる事を望んでいるが、音楽はそれを望んでいないと言う風に感じているという意味に私は捉えています。
事実、音圧上げのマスタリングではミックスダウン後のマスター音源とガラリと印象が変わる事が多く、音質を変えずに音を大きくする事は非常に難しいという事がわかります。
ミキシングを担当したエンジニアはミックスダウン終了の状態でスピーカーのボリュームを上げた音が最高に良い音だと思っているはずです(私もそう思っています)
そう思っていないミキシングは全力のミキシングではない事になるからです。
インディーズCDでマスタリングエンジニアに発注を出した場合、もれなく残念な結果になる事が多いのは何故でしょう?
googleにマスタリングスタジオと打つと159,000件の結果が表示されますが、そのほとんどがアマチュア半分の「マスタリングをやれます」状態かもしれません。
一流マスタリングエンジニアの方々は職人技とも言える技をもっていまが、長年の経験や技術、勘が左右される世界である事はいうまでもありません。
そんな職人がろくな経験もせずにポンポン大量に世に現れるはずがありません。
マスタリングで音圧を上げる事は「音の大きいだけのその他のCD」と並べるためだけの行為であると思っています。
当たり前と言えば当たり前ですが、その行為自体にどれだけの作品の意味があるのか?
もう一度考えてみる必要があるかもしれません。
長文御精読ありがとうございました。
さて当サイトでは主にマスタリングが上手くいかないのはミックスに原因がある可能性が高いという事を書きます。
もちろんマスタリング自体にも触れますが音圧を上げるだけの方法は他のサイトを参照してください。
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